2006年10月28日

「イスラーム巡礼」野町和嘉写真展 at 武蔵野市立吉祥寺美術館

明日で終わっちゃうんだけど。
昨日観てきたので、一応紹介します。

ハッジ(メッカ大巡礼)を撮るためにムスリムに改宗し
日本人にはめったにお目に掛かることのできないメッカ・メディナの様子を
撮影した野町さんの写真展。
これはもう見に行くしかない、と思いましたよ。
ほんと、異教徒立ち入り禁止のメッカや巡礼の様子なんて
写真だってなかなか見ることはできないのですもの。

まずメッカの写真。
ハッジの時ともなれば100万人、200万人の人がメッカに集まり
カアバ神殿で礼拝し、定められた行を行う。
その圧倒的な人の数の迫力。
カアバ神殿の礼拝所を埋め尽くす人々。
タワーフの行(カアバ神殿の周りを7回回る)を行う人々は
渦となり、白いバターの如く溶け出して見える。
神殿の扉に群がる人々、聖なる黒石に代わる代わる触れようとする人々。
宿泊所の巨大なテント村。
早朝の山に集って静かに祈る人々。

巡礼の「熱狂」と礼拝の「静謐」と、
100万もの人が全く同じ行動をとる「全」の姿と
地域によって別々の格好をし、
一人一人が違う想いと感動を現す「個」の姿と。
そこにはまるで人間の全てが内包されているかのようだ。
ただただ、圧倒されてしまう。

その後、メディナの写真がいくつかあって
それからイランの写真。
こちらはシーア派独特のイマーム廟への巡礼がメイン。
シーア派はスンナ派との対立の中で独自性を得てきた宗派。
現代においてはそれが国家間の対立になってたりするけど
対立自体が政治的な意図を持っていたのも確かだ。
シーア派=イラン人という目で見てしまうけど、
もともとシーア派はイラクで起こったもので、
人種的な対立なんて関係なかった。
それを政治的に利用したのがペルシア王朝のサファビー朝だったのだ。

サファビー朝は国をまとめるためにシーア派を国教とし、
シーア派イマームの廟への巡礼を奨励した。
アラブ人と一線を画すためですな。
しかしシーア派の最も重要なイマーム、フセインの廟はイラク領内にある。
それでペルシア領内のマシャッドにあるイマーム・レザー廟への巡礼を
最も奨励したのだそうだ。
そりゃ、巡礼の経済効果って莫大なものだから、
自国内で循環させた方がいいもんね。
そういう政治的目的もあったわけ。

もともと、そういう政治的な意味合いがあったペルシア人のシーア派だけど
今は立派にイラン人のアイデンティティになっている。
熱狂的な宗教行事も、アラブにはない美しいモスクの姿も
イランならでは。
写真に取られてもヘッチャラな女子学生もね。
宗教に熱狂的かと思ったら、そうやってあまり厳格ではない一面も見せてくれる。
そんな聖と俗が入り交じっていてヘッチャラなイランという国は
割と好きなんだけどね。
まあ、本音と建て前の使い分けが難しくて、付き合うには一苦労だろうけど。

さて、写真展を見て、今
あらためて、宗教って何だろう?
って考えさせられる。
信仰は心の支えであることは間違いないと思うけど
宗教は人は救えても世界は救えない。
でも、こうやって巡礼をする人々の素直な真摯な心を垣間見ると
そもそも宗教を外側の世界に持ち込むこと自体間違っているのかと思うよ。
宗教はあくまでヒトの内側の世界のもので
宗教によって人々の行動が結果的に外側世界に現れてきたとしても、
それを社会や政治が利用しようとすることがそもそもの問題なのかも。
posted by きんと at 19:36| Comment(3) | TrackBack(0) | 展覧会・museum | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。お久しぶりです。ふねゆみです。
…覚えてらっしゃいますでしょうか。「珠彩」というサイトを運営していました。(した、というのは、もう一年以上、全くFTPからのサイトへのアクセスができず、そろそろサーバさんに削除をお願いしようかと考えているためです…)
現在私は、大学で本格的にアジア宗教を専攻し始めていて、最後の数行、私自身も非常に考えさせられることが多いです。
特にオーストラリアでは、日本以上に科学信仰(と、私は呼んでいるのですが)が強くて、宗教の非科学性や人を強く捕らえる力ばかりを考える方が多いです。
でも信じる人にとっては、それは科学と同じかそれ以上の、世界の構成要素であり、真理なんですよね…たとえ、それが政治的に変遷させられた結果のシステムであっても。
政治を論じるような学生でも、宗教が絡んでくると扱いに戸惑ってしまうのが実情のよう。
…なーんて、そんな難しいことを考えなくてもいいような平和な世の中になってくれないかな、なんて都合のよいことをこの頃本当に思います。
Posted by ふね at 2006年10月28日 20:48
あ、あと、それから… 少し前から、こちらのブログと、もう一つのブログを、私のブログピープルに加えさせていただいています。
ご迷惑でしたら、お知らせください。
ではでは*^^*
Posted by ふね at 2006年10月28日 20:50
ふねゆみさん、コメントありがとうございます!
ご無沙汰しています。
私もふねゆみさんのブログをRSSリーダに入れてたんですが、マイブログがドリコムに移行する時のどさくさでURLをなくしてしまってました。。。
すみませんf(^^;
ブログピープルの件は大歓迎です!

宗教のことですが
政教分離は現代社会の原則でありますが、実際にはなかなか分離できないんですよね。
アメリカでも大統領が聖書に手を置いて宣誓するし。
社会規範として宗教を持ち込むなら(イスラーム法なんかはこちらの方ですね)アリかと思うけど、現代社会では宗教を全然別の政治的意図に利用している場合が多すぎると思います。
宗教界の方でもそういうものから離れて自立していられるエネルギーをなくしているし。

自分としては、個人的な信仰に対しては極力偏見しないようにしようと思います。
Posted by きんと at 2006年10月29日 01:11
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